Postcards
青々と茂る緑の中、橋の下を流れる川面のきらめきを眺めながら山あいに吹く風を心地よく感じる…。
都心を離れた郊外ののどかな風景、しかし一方で日本の山間部ならどこにでもありそうな景色でもあります。
最寄り駅からも距離があり、地元の人々でない限りわざわざ立ち寄ることはないであろう、そして地元の人であるほど特に気にも留めずに通りすぎてしまうのではないかというこの場所が、とある出来事を境に多くの若者が訪れる県内有数の観光スポットになったと言ったら果たしてあなたは信じるでしょうか。
日本のアニメファンにはおなじみの作品「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」。
この作品のキービジュアルに使われ、物語の舞台として周辺地域が作中に登場するやいなや、ここ秩父大橋、そして埼玉県秩父市は日本中のアニメファンに知られる場所となったのです。
埼玉県民である私でさえも小さいころに遠足で行ったぐらいしかない秩父市がこんなに盛り上がるとは当時夢にも思っていませんでした。
しかし作品を視たあとに訪れたその場所は、決して会うことの出来ない二次元の登場人物たちを肌で感じることができる…まさしく「聖地」そのものであったのです。
そんなここ秩父市をはじめ、日本のアニメ聖地の魅力は、そこで出会ったアニメファンと地元の方々との間にコミュニケーションが生まれるところだと思います。
アニメファンは聖地巡礼を通して、地元の街並みや文化も楽しむようになり、地元の方々の中には実際にアニメをみて名所を教えてくれる方なんかもいらっしゃるのです。
きっかけが無ければ決して交わることがなかったであろうコミュニティ間の交流。
ここ秩父大橋はその一例として、地元とアニメファンの間をつないだまさに懸け橋となったのだと思います。